蕎麦屋の独り言 2

 久方ぶりで師匠筋にあたる蕎麦屋を訪ねたら、親父がぼやくことしきり。
 「どうしたの?」と聞いたら、「最近、通ぶった客や、評論家?が多くて困ったよ」とのこと。
 そう言えば茂三郎にも、もっと細いのが良いとか、星が少ないとか、俺は図太いのが好きだとか言うお客は少なからず居て、「今日、5人で行くから」「あいよー。細めだね」などの会話の日は、おおむね細打ちの蕎麦となるが、これは常連さんの話。
 「お前みたいによー。教えて下さい位の事を言いながら来るならそれなりの対応も可能だが、特別扱いは嫌なのでお忍びで歩いてますだってよ。誰が特別扱いなんかするもんか、そんな時はパク蕎麦を喰わしてやるんだよ」
 パク蕎麦とは一泊した蕎麦、つまりは前日の売れ残りである。通常は時間の経過した段階で処分するのだが、件のようなお客が来る日は何となく解るのだそうな。
 「だってよお、相手は俺の腕と味を品定めに来るんだろう。試される俺だって相手の舌を試してやるんさ」
 何とも恐れ多い話だが、親父の言にも一理ある。

 いえいえ、決して茂三郎ではありませんよ。